声をあげる勇気
「あなたは悪くない」
そう言えるまでに、福山里帆さんは9年かかりました。
富山県黒部市で当時高校生だった娘に性的暴行を加えた父親に対して、富山地裁は懲役8年の実刑判決を下しました。
里帆さんは、自身の体験を実名で訴え続けてきた勇気ある女性です。
事件の経緯と裁判
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事件は2016年8月、富山県黒部市の自宅で、大門広治被告は福山里帆さん(当時高校生)に対し、性交を行ったとして起訴されました。福山さんは中学2年生の夏から、父親による性被害を受けていた。
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父親・大門広治被告は性交渉は認めたものの「逆らえない状態ではなかった」と主張。弁護側は無罪を求めました。
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富山地裁は、里帆さんの証言を「高度な信用性がある」と評価し、準強姦罪の成立を認め、求刑通り懲役8年の実刑判決を言い渡しました。
裁判では、被害者が心理的・物理的に抵抗困難な状態だったかが最大の争点となりました。
被害者としての苦悩
里帆さんは中学2年生の夏から約3年間、父親による性被害を受け続けました。
「家族が壊れるのも怖くて、誰にも相談できなかった」
4つ下の妹への影響や家族がバラバラになってしまう恐怖から、長い間沈黙を続けざるを得ませんでした。しかし、夫である佳樹さんの言葉が大きな支えとなりました。
「助けるよ、君の力になる」
この一言が、彼女に告訴を決意させました。過去の自分を救うため、そして同じ苦しみを抱える人たちのために立ち上がったのです。
証言と裁判の過酷さ
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裁判では中学校2年生の自分に戻るような証言が求められ、PTSDや体調不良と闘いながら証言しました。
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検察や警察は、検察官の性別や状況に配慮した支援を提供し、長期的な心理的負担に対応しました。
里帆さんの証言は、家庭内性犯罪の被害者が抱える孤立や苦悩を社会に示す重要なものでした。
支援団体「Second Birthday」の設立
里帆さんは自身の経験を踏まえ、家庭内性被害者の支援を目的とした一般社団法人「Second Birthday」を設立しました。
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家庭内性被害者は加害者が家族であるため、支援を受けにくい状況があります。
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経済的・精神的な負担が長期化しやすく、時効前に告訴が難しいケースも少なくありません。
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「被害者が泣き寝入りしない社会」を目指し、支援と啓発を行っています。
被害に遭っている方へのメッセージ
福山里帆さんは語ります。
「社会は公平に見てくれます。今、家庭内で性被害に苦しんでいる方がいるなら、どうか声を上げて、信頼できる人に相談してください。あなたは決して悪くありません。」
また、里帆さんを支えた旦那さんの佳樹さんはこう話しています。
「自分が一番に信じてあげなかったら、彼女の未来は失われてしまうかもしれないと思った。彼女の明日を諦めたくない。彼女の命をつなぎたい。」
まとめ
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家庭内性被害は、密室で起こるため証拠が残りにくく、被害者は孤立しがちです。
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告訴や支援を受けることで、加害者を社会的に罰することが可能になります。
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少しでも安心して話せる環境を作るために、周囲の大人や支援団体を頼ることが大切です。
「あなたの声は社会を変える力になる」

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