書店の閉店が相次ぐ中、大学生が新たに書店を立ち上げる動きが注目を集めています
怜文堂書店──19歳大学生が学習参考書専門の書店を開業
2025年10月、愛知県尾張旭市に19歳の大学生が「怜文堂書店(lemondo.books)」を開店しました。店内は学習参考書を中心に揃え、学生にとって便利な書店です。開店費用は約300万円。昼は書店の運営、夜は塾講師と、二足の草鞋で挑戦を続ける若き店主。売り上げは両親への返済に充てられ、本人には給料はありません。
書店開業のきっかけは自身の体験にあります。「本は手に取って中身を確かめて購入したい」という思いがあり、祖母の倉橋節子さんも「書店が次々に閉店していくのになぜ?」と感じていたといいます。店主が来店者にがっかりさせたくないという思いで開業したことを知り、祖母は自分用の書籍やドリルを購入して応援しています。父の良之さんは「若い子の挑戦は応援したい」と書店の留守を預かり、母の朋子さんも「大学生のうちに時間があるし、社会経験にもなる」と後押ししています。
怜文堂書店の特徴の一つは、ブックカバーと古書へのこだわりです。ブックカバーにはアラン・ベネットの言葉「A book is a device to ignite the imagination(本というのは、想像力に火をつけるための装置である)」をデザイン。本を通して想像力を豊かにしてほしいという思いが込められています。古書は書き込みや前所有者の筆跡をあえて残し、その価値を大切にしています。
さらに、店内の一角ではギャラリーや絵の演奏会も開催。単なる書店にとどまらず、訪れる人に本以外の体験も提供しています。大学生である店主は名古屋大学農学部に通いながら、人口増加や異常気象の中での安定した食料供給について学び、学問と書店運営を両立させています。
怜文堂書店は、学習参考書を売る場であると同時に、若い店主の挑戦と家族の思いが詰まった「書店の灯」を守る場所として、日々奮闘しています。
「本屋余白」の経験──本屋の社会的意義を学ぶ
一方、かつて下北沢で営業していた「本屋余白」は、東京大学の学生が運営していた書店でした。店主の小澤さんは本屋を続ける意味についてこう語ります。
本屋余白を通して感じたのは、
「世界は思った以上にあたたかい」ということ。出会った人々や小さな交流から、勇気と安心をもらいました。競争を避けていた自分も、主体的に挑戦する楽しさを知り、誰かに本を贈る喜びや、自分の価値観の「幹」を少しずつ見つけることができました。
閉店の決断は、心地よい場所に留まるだけでは得られない、新しい挑戦へのステップです。これからは未知の土地や文化に飛び込み、主体的に生き、真の豊かさを追求し続けたいから
と話していました。
名古屋──本と挑戦が息づく都市
名古屋は、東京や大阪に次いで本に関わる挑戦が多い都市です。地元の大学やコミュニティの支援、そして若者の挑戦を応援する文化が、こうした活動を後押ししています。

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